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もしも、冷蔵庫の中だけ時間が2倍の速さで進んだら


もしも、冷蔵庫の中だけ時間が2倍の速さで進んだら。

冷蔵庫の外では、いつも通り一日が24時間。でも、冷蔵庫の中では、その間に二日分の時間が進んでいる。

朝、買ってきた牛乳を冷蔵庫に入れる。外では夜になり、次の日の朝になって冷蔵庫を開ける。外では一日しかたっていなくても、冷蔵庫の中では二日分の時間が経過している。

冷蔵庫なのに、中に入れたものの変化まで外より早く進む。

最初に困るのは、やっぱり食べ物だろう。

冷蔵庫に入れるほど、早く古くなる

今の冷蔵庫は、食べ物を長持ちさせるために使う。でも、この世界では、冷やしている間にも時間が2倍の速さで進んでいる。

買ってきた肉を冷蔵庫に入れる。外では一時間しかたっていなくても、冷蔵庫の中では二時間が経過している。夕食まで冷やしておこうと思って入れたら、そのぶん食品の変化も早く進む。

作り置きのおかずも同じだ。朝に作った料理を冷蔵庫へ入れて、夜に取り出す。外では半日くらいしかたっていなくても、冷蔵庫の中では一日近く時間が進んでいる。

だからといって、冷蔵庫に入れないわけにもいかない。肉や魚を常温で置いておけば、それはそれで傷みやすくなる。

この世界の人たちは、冷蔵庫を使わなくなるのではなく、「できるだけ短い時間だけ冷蔵庫に入れる」という使い方をするようになる。

買い物から帰ったらすぐ冷蔵庫へ入れ、できるだけ早く料理する。作り置きも、今までより少ない量にする。

冷蔵庫そのものがなくなるのではなく、冷蔵庫との付き合い方が変わる。

スーパーでは、冷やす時間を管理する

家庭以上に大きな問題になるのが、スーパーだ。

肉、魚、牛乳、豆腐、惣菜、ケーキ。冷蔵が必要な商品は、店にいる間もずっと冷やしておかなければならない。ところが、冷蔵ケースの中では時間が2倍の速さで進んでいる。

そこでスーパーは、「何時に冷蔵ケースへ入れたか」を今まで以上に細かく管理する。

朝から全部の商品を並べておくのではなく、売れ方を見ながら少しずつ補充する。冷蔵が必要な商品は、店の中でもできるだけ短い時間で売り切る。

閉店間際の商品をどうするかも重要になる。冷蔵ケースに入っていた時間が長いほど、外の世界で同じ時間を過ごした商品よりも、食品の変化が進んでいるからだ。

食品メーカーも、商品がどれくらい冷蔵されるのかを調べながら、保存性を確認する必要が出てくる。

食品を冷やすこと自体は必要。でも、冷やしている時間も無視できない。

冷蔵庫の代わりは、なかなか作れない

では、時間を早めずに冷やせる機械を作ればいいのではないか。

「温度は下げるけれど、時間はそのまま」という装置を考える人も出てくる。

ただ、これは簡単ではない。冷蔵庫の中だけ時間が2倍になるという現象が、そもそも冷却とは関係なく起きているからだ。

温度だけを下げて、時間の進み方だけを変えない。そんな機械を作るには、かなり長い研究が必要になる。

家庭ですぐに新しい家電へ置き換わるわけではなく、まずは冷蔵庫に入れる時間を減らす工夫が増える。

買い物の回数を増やして一度に買う量を減らす。作った料理を何日も保存するのではなく、その日に食べる分を中心に作る。

冷蔵庫は今よりも「長く保存する箱」ではなく、「必要なものを一時的に冷やしておく箱」に近くなる。

時間が早いことを利用する食品も出てくる

食品の中には、時間をかけることで変化していくものがある。漬物、味噌、チーズなどだ。

こうした食品は、ただ古くなっていくのとは違う。時間がたつことで、味や香りが変わっていく。

もし冷蔵庫の中で時間が2倍になるなら、こうした変化も早く進む可能性がある。

そこで食品会社が調べ始める。

「冷蔵庫の中に何時間置けば、どんな変化が起こるのか」

たとえば漬物を作る。外で一日置いたときと、冷蔵庫の中で半日置いたとき。同じくらいの時間が進んでいるなら、味にどんな違いが出るのかを比べる。

何でも早く変化させればいいわけではない。早く進みすぎると、狙った味になる前に別の変化が起こるかもしれない。

食品会社では、温度だけでなく、冷蔵庫の中に置いていた時間まで細かく調整するようになる。

家庭でも、時間を早く進める使い方が生まれる

やがて、その使い方は家庭にも広がっていく。

たとえば漬物を作るとき。今まで一晩置いていたものを、冷蔵庫の中では短い時間で仕上げる。味をなじませたい料理を、決めた時間だけ冷蔵庫に入れる。

ただし、何でも冷蔵庫に入れればいいわけではない。

普通に保存したほうがいい食品もある。時間を早く進めることで変化を利用できるものと、単純に古くなってしまうものを区別しなければならない。

家庭では、「これは冷蔵庫に長く入れていい」「これは早めに出す」という感覚が少しずつ身についていく。

料理本にも、「冷蔵庫で何時間」と書かれるようになる。

今の料理本でいう「冷蔵庫で一晩」が、この世界ではかなり重要な意味を持つ。

食品工場には、時間を進める部屋ができる

食品会社は、もっと大きな設備も作る。

たとえば漬物や発酵食品を作る工場に、時間を早く進める部屋を用意する。

普通の冷蔵庫とは違い、どのくらい時間を早く進めるのかを管理し、食品ごとに条件を調べる。

時間の経過に合わせて進む工程なら、外では数日かかる作業を、より短い期間で進められる。

うまく使えば、商品の開発や製造にかかる時間を短くできる。

最初は「冷蔵庫の中で食品が早く古くなる」という困った性質だったものが、一部の食品では利用できるようになる。

冷蔵庫が食品を保存する場所である一方、食品工場には時間を進めるための設備も作られる。

冷蔵庫は、危険な場所にもなる

そして、もっと大きな問題もある。

もし冷蔵庫の中に入った人間まで時間が2倍の速さで進むなら、これはかなり危険だ。

普通の家庭用冷蔵庫に人が入ることはない。でも、食品工場や冷蔵倉庫などには、人が中に入って作業する場所もある。

この世界では、そうした場所に入ること自体が、今まで以上に注意が必要になる。

外では一時間しかたっていなくても、中で作業している人には二時間分の時間が進む。作業が長引けば、そのぶん外より早く時間が経過する。

そのため、冷蔵倉庫などでは中に入っている時間を細かく管理したり、作業を短時間で終えられるようにしたりする必要が出てくる。

冷蔵倉庫には人が入ることはある。でも、長くいることを前提にした場所ではない。

この世界では、必要な作業だけを短時間で済ませ、できるだけ早く外へ出ることが、今まで以上に重要になる。

農業では、別の使い道が見つかる

人間ではなく植物なら、時間が早く進む性質を利用できるかもしれない。

ただ植物を入れておけば、勝手に早く育つというほど単純ではない。光、水、温度、栄養など、成長に必要な条件がそろっている必要がある。

そこで、時間を早く進める性質を使った促成栽培が考えられる。

食品工場などで時間の進み方を変える設備が実用化されれば、その仕組みを農業施設にも応用できる。

たとえば、温度や光を管理した施設の中に野菜を育てる場所を作り、その一部を時間が早く進む空間にする。

うまくいけば、種をまいてから収穫までの時間を短くできる。

ただし、植物だけ時間を早めればいいわけではない。水やりや栄養の管理も、その時間に合わせなければならない。

成長が早くなった分だけ、必要な作業も増えるかもしれない。

「時間が2倍になるから簡単に育つ」というより、植物を育てる仕組み全体を時間に合わせて作る必要がある。

冷蔵庫から始まった性質が、農業の設備にも使われるようになる。

最初は、ただ食品が早く古くなるだけだった。

家庭では、肉や魚を冷蔵庫に入れておく時間を短くする。スーパーでは、冷蔵ケースに入れる時間を管理する。

一方で食品会社では、冷蔵庫の中で早く進む時間を利用して、漬物や味噌などの食品を作る研究が始まる。その性質を利用した時間加速の設備が、食品工場や農業施設に作られていく。

人間にとっては、時間を早く進めることが便利とは限らない。だから、人が長時間入ることを前提にした装置は作られず、安全面が重視される。

この世界では、冷蔵庫の役割そのものが変わっている。

食べ物を長持ちさせるための道具なのに、入れている時間そのものは早く進む。だから家庭ではなるべく短時間で使う。でも、その性質をうまく使えば、漬物や発酵食品の製造に役立つ。さらに農業では、条件を整えた場所で植物の成長を早めるために使われる。

同じ「時間が2倍になる」という性質でも、使い方によって困ったことにも便利なことにもなる。

冷蔵庫の扉を開ける。

中に入っている食品を見る。

外ではまだ数時間しかたっていない。でも、冷蔵庫の中では、その倍の時間が過ぎている。

だから今日食べるものは早く取り出す。漬物なら、決めた時間だけ入れておく。

冷蔵庫の中にあるものを見ながら、「これはあと何時間入れておけるだろう」と考える。

今の世界では、冷蔵庫の時間を気にすることはほとんどない。

この世界では、温度と同じくらい、時間も冷蔵庫を使うための大事な情報になっている。


※ この文章は空想です。現実の世界では、無理なことを試さないでください。
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